[製作家情報] クリストファー・ディーン Christopher Dean 1958年生まれ。イギリス、オックスフォードに工房を構える。10代の頃よりギターを演奏していましたが、17歳の時にプレゼントされたIrving Sloane のギター製作マニュアルを読んだことをきっかけに製作への興味を持ち始めます。1979年には有名なLondon College of Furnitureに入学し3年間楽器製作についての基礎を学びます(同校はゲイリー・サウスウェル、マイケル・ジーらの出身校でもあります)。ここでのカリキュラムにはホセ・ルイス・ロマニリョスやポール・フィッシャーの工房での実地研究も含まれていたことがきっかけになり、卒業後1年間ニュージーランドで家具製作に従事したのちに1982年フィッシャーの工房に職人として入ります。ディーン自身はフィッシャーのことを師として尊敬し実際に多くを学んでゆきましたが、フィッシャーはこの青年の成熟した感性と技術をすぐに見抜き、わずか3か月の「研修期間」のあとすぐに正式な職工としてフィッシャーラベルのギター製作を託すことになります。ここで充実した3年間を過ごした後に独立し自身の工房を設立、現在に至ります。
ネック:セドロ
指 板:黒檀
塗 装:表板 セラック /横裏板 ラッカー
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.0mm /6弦 3.6mm
[製作家情報]
クリストファー・ディーン Christopher Dean 1958年生まれ。イギリス、オックスフォードに工房を構える。10代の頃よりギターを演奏していましたが、17歳の時にプレゼントされたIrving Sloane のギター製作マニュアルを読んだことをきっかけに製作への興味を持ち始めます。1979年には有名なLondon College of Furnitureに入学し3年間楽器製作についての基礎を学びます(同校はゲイリー・サウスウェル、マイケル・ジーらの出身校でもあります)。ここでのカリキュラムにはホセ・ルイス・ロマニリョスやポール・フィッシャーの工房での実地研究も含まれていたことがきっかけになり、卒業後1年間ニュージーランドで家具製作に従事したのちに1982年フィッシャーの工房に職人として入ります。ディーン自身はフィッシャーのことを師として尊敬し実際に多くを学んでゆきましたが、フィッシャーはこの青年の成熟した感性と技術をすぐに見抜き、わずか3か月の「研修期間」のあとすぐに正式な職工としてフィッシャーラベルのギター製作を託すことになります。ここで充実した3年間を過ごした後に独立し自身の工房を設立、現在に至ります。
その作風は師であるフィッシャーや、さらにさかのぼってデヴィッド・ルビオをも想起させる堂々たる外観とたっぷりと濃密な艶を含んだ音色、力強い響きなどが挙げられますが、そうした彼の出自に直接つながるラインとは別にフランスのフレドリッシュ、トーレス、ハウザーからも多くのインスピレーションを得ており、とりわけサントス・エルナンデスからの大きな影響を受けています。1929年製のサントスギターを修繕する機会を得た彼は実地にオリジナルの構造を研究し、その後すぐれたサントスモデルを発表。憧れてやまないと公言する伝説的ギタリスト アンドレス・セゴビアへのオマージュさえも含んだすぐれたモデルとして高い評価を得ています。
[楽器情報]
クリストファー・ディーン製作 2003年製 No.326 Usedの入荷です。伝統的であることの必然的な多様性を十分に認識しているこのイギリス屈指の製作家の、古風なものと新しい感性とが互いの個性を認め合いながら同居しているような、独特の魅力のある一本。
表面板力木設計は、サウンドホール上側(ネック側)に長短2本のハーモニックバーとこれらに挟まれたスペースいっぱいに補強板が貼られ、下側(ブリッジ側)には1本のハーモニックバー、サウンドホール周りには同心円状に円形の補強板が貼られておりその一部は下側ハーモニックバーを通過して円周を継続させています。扇状力木は左右対称に5本、駒板の幅に収まるようにセンターに寄り添うような配置。駒板サドル位置には駒板幅と同じ長さのバーを設置し(つまり5本の扇状力木の設置されている範囲にちょうど収まるように)、5本の力木の中央3本はこのバーを貫通するような形になっています。5本の力木のうち両外側の計2本はサウンドホール下のハーモニックバーを貫通してホール縁付近まで延伸し、ボトム側も後述するクロージングバーの端を通過してボトムまで伸びています。
2本のクロージングバーがハの字型に配置されていますが、通常は扇状力木すべての先端を受け止めるようにして設置されるのですが、ここでは5本の力木の範囲内に収まるように短く、実際に先端を受けとめているのはセンターの中央の3本のみとなっています。レゾナンスはG#の少し下の設定になっています。
駒板サドル位置にバーを設置し5本の力木と交差させるという配置関連性はあのフランスの名工ロベール・ブーシェの特徴的な設計を思い起こさせますが、ディーンはここでバーの形状やサイズ(ブーシェのバーは表面板横幅いっぱいの長さで、低音側と高音側の高さを変化させていますが、ディーンは先述の通り駒板の幅に収まっており、高さも低めで一定にしてあります)交差部分の方法などを独自に設定しています。またクロージングバーの設置もブーシェには(初期のトーレス設計の時期を除いては)見られない設計であるばかりか、ディーンの場合はその配置自体に特徴があり、あえて言えば同じフランスのダニエル・フレドリッシュとの関連性が見て取れます。
そしてここで聴くことのできる音色はそうしたブーシェ的な要素を幾分か感じさせつつも、ディーン固有の感性とイギリス的資質が現れたもの。全体的にストイックなまでに音色の華やかさを抑えながらも、身振りが非常に雄弁なので音楽自体の表情はとても豊かになります。特に高音の、木を叩いたような発音と濃密な音像は時にギター以上の何かのような佇まいを聴かせ(この点でデビッド・ルビオ初期の「銀鐘のような」高音を思わせもします)、これが十分な強さとうねりを持ちながらもやはりあくまでもストイックな低音の響きに支えられるその対照とバランス感は大変に魅力的。そしてそれぞれの音像そのものに独特のエコー感があり、これこそはあのブーシェ的な特徴が現れた部分と言えます。タッチに対する反応も実に心地よく、音量と表情変化に関するリニアニティが高いことに加え、弦の張りも弱めから中庸なので演奏時のストレスをあまり感じません。
よく弾き込まれていることもあり、表面板は全体に(特に高音側)弾きキズ、スクラッチ跡、大小の打痕等多く見られます。ネック裏は爪による塗装摩耗を部分的にタッチアップした跡が数か所あります。裏板は演奏時に胸の当たる部分にタッチアップ補修歴、横板のボトム部分に割れ補修歴があります。ネックは低音側はほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、指板とフレットは1~5フレットでやや摩耗していますが演奏性には影響のない範囲です。指板は高音側20フレット仕様。ネック形状は薄めのDシェイプ、弦高値は3.1/3.mm(1弦/6弦 12フレット)で現在値でも十分に弾きやすく感じますがサドル余剰が2.0mmありますのでお好みに応じてさらに低く設定することが可能です。糸巻はカナダの高級ブランドRodgers製を装着、こちらも現状で動作状況は良好です。