〔製作家情報〕 Jose Luis Romanillos Vega(1932~2022)スペイン マドリッド生まれ。 クラシックギターにおける現代最高の製作家として、亡くなった後も深い崇敬を集めている、まさに巨匠中の巨匠と言える名工です。スパニッシュギターの伝統に深く立脚しながらも独特な審美センスにあふれた意匠と、極めて繊細で多彩な表現力を備えた彼のギターは、クラシックギターにおける至高の逸品としての評価を不動のものにしています。
ブランドは1991年より息子のリアムが共同作業に正式に加わり、ラベルもJose Luis Romanillos&Son に変更。1995年にはイギリスからスペイン・カスティーリャ=ラ・マンチャ州グアダラハラ県のシグエンサにある小さな集落ギホーサに帰国移住し、その後も実に旺盛に製作を続けています。
ロマニリョスはまた大変な碩学としても知られ、名著の誉れ高い「アントニオ・デ・トーレス ~その生涯と作品~」(1983年)やスペインの撥弦楽器製作家の包括的な人名辞典「The Vihuela de Mano and the Spanish Guitar: A Dictionary of the Makers of Plucked and Bowed Musical Instruments of Spain (1200–2002) 」(2002年)を上梓するなど研究およびその執筆業でも高い評価を得ています。その知識を活かして後進の指導にも尽力。毎年シグエンサにてギター製作の講習会を息子のリアム、ゲルハルト・オルディゲスやステファン・リーズをアシスタントにして開催していたことは彼の教育熱心な面をよく物語っています(2001年の講習会には尾野薫、田邊雅啓、中野潤、佐久間悟が参加)。2003年には彼自身のギター製作法をつまびらかにした「Making a Spanish Guitar」を発行。
2020年には、彼の講習会のアシスタントを務めていたJosep Melo氏によりロマニリョス1993年以降の製作史を総括する大著「Romanillos Guitarras The Guijosa Period 1993~2015」が上梓され、現役最大の巨匠として世界的に更なる評価の高まりを見せていましたが、2022年2月11日、惜しまれつつその生を閉じます。伝統工法を標榜する世界中の多くの優れた製作家たちによってオマージュモデルが作られており、トーレス、ハウザー、ブーシェらと並び偉大な指標としてその存在がますます強く認識されている、20~21世紀スペイン最大の巨匠のひとり。
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 3.2mm /6弦 4.0mm
〔製作家情報〕
Jose Luis Romanillos Vega(1932~2022)スペイン マドリッド生まれ。
クラシックギターにおける現代最高の製作家として、亡くなった後も深い崇敬を集めている、まさに巨匠中の巨匠と言える名工です。スパニッシュギターの伝統に深く立脚しながらも独特な審美センスにあふれた意匠と、極めて繊細で多彩な表現力を備えた彼のギターは、クラシックギターにおける至高の逸品としての評価を不動のものにしています。
10代の頃は地元の家具製作工房で働き、1956年にイギリスに移住。移住した当初は病院で看護士として働いていましたが、1961年に純粋にプライベート用として最初のギターを製作し、その後も時間の許す限りギター作りに励むようになります。1969年にはギタリスト ジュリアン・ブリームの知己を得て、彼はロマニリョスの非凡な才能をすぐに見抜くと、ウィルトシャー、セムリーにある自身の敷地内に工房を作らせて製作家として独立することをすすめます(この稀代の名ギタリストが所有していた数々の名器の中でも、ロマニリョス1973年製のギターは長年ブリームお気に入りの一本となったことは良く知られています)。異様なまでの探求心を持ったこの素人職人と、世界的名手との邂逅はやはり製作史的な事件と言ってよく、ロマニリョスはブリームからのフィードバックを基に、独自の作風を確立するに至ります。偉大なる先人アントニオ・デ・トーレスとヘルマン・ハウザー1世にその理想を見出し、トーレスの上品な深みある響きにハウザーの透徹さ、そこに自身の
ある種「女性的」ともいえるような身振りを纏わせ、全体を比類のない審美的センスでまとめあげたギターは外観的にも音響的にも一つとして同じものがなく、一本一本が美学的にも、またマーケット的にも非常に高い価値を持つようになります。
ブランドは1991年より息子のリアムが共同作業に正式に加わり、ラベルもJose Luis Romanillos&Son に変更。1995年にはイギリスからスペイン・カスティーリャ=ラ・マンチャ州グアダラハラ県のシグエンサにある小さな集落ギホーサに帰国移住し、その後も実に旺盛に製作を続けています。
ロマニリョスはまた大変な碩学としても知られ、名著の誉れ高い「アントニオ・デ・トーレス ~その生涯と作品~」(1983年)やスペインの撥弦楽器製作家の包括的な人名辞典「The Vihuela de Mano and the Spanish Guitar: A Dictionary of the Makers of Plucked and Bowed Musical Instruments of Spain (1200–2002) 」(2002年)を上梓するなど研究およびその執筆業でも高い評価を得ています。その知識を活かして後進の指導にも尽力。毎年シグエンサにてギター製作の講習会を息子のリアム、ゲルハルト・オルディゲスやステファン・リーズをアシスタントにして開催していたことは彼の教育熱心な面をよく物語っています(2001年の講習会には尾野薫、田邊雅啓、中野潤、佐久間悟が参加)。2003年には彼自身のギター製作法をつまびらかにした「Making a Spanish Guitar」を発行。
2020年には、彼の講習会のアシスタントを務めていたJosep Melo氏によりロマニリョス1993年以降の製作史を総括する大著「Romanillos Guitarras The Guijosa Period 1993~2015」が上梓され、現役最大の巨匠として世界的に更なる評価の高まりを見せていましたが、2022年2月11日、惜しまれつつその生を閉じます。伝統工法を標榜する世界中の多くの優れた製作家たちによってオマージュモデルが作られており、トーレス、ハウザー、ブーシェらと並び偉大な指標としてその存在がますます強く認識されている、20~21世紀スペイン最大の巨匠のひとり。
[楽器情報]
ホセ・ルイス・ロマニリョス1世 1991年(完成は1995年)製作 ‘La Infanta' の入荷です。Josep Melo氏によるロマニリョス後期の決定的なレゾネ本と言える「Romanillos Guitarras」にも掲載されもので、彼の芸術性と音響哲学とが極めて高次元で融合した至高の一本。
その外観において彼の符牒となっているロゼッタデザイン(コルドバ地方のモスクの柱廊を模したとされる意匠はあまりにも有名)とヘッドシェイプの存在感はもちろんのこと、表板のヘリンボーン柄のパーフリング、4ピースバックの接ぎ部分にあしらわれた象嵌、駒板のタイブロックのデザインに至るまですべてに彼の手仕事ゆえの立体感があり、見るものの網膜を刺激するような静かな迫力。表面板はベアクロウのたっぷりはいったヨーロピアンスプルース、横裏板はこの上なく美しいブラジリアン・ローズウッドでその対比の鮮やかさ、全体の気高く、どこか野性的でさえある外観はなんとも素晴らしい。
表面板力木構造はトーレススタイルと言えるもので、サウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー。このうち下側のバーは高音側と低音側とに1か所ずつ長さ5cm、高さ3mmほどの開口部が設けられています。そして左右対称7本の扇状力木とこれらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配された2本のクロージングバー。7本の扇状力木のうち高音側と低音側のそれぞれ2本ずつはサウンドホール下側バーの開口部をくぐり抜けてホール周りの補強板縁まで達しています。駒板部分に薄い補強プレートの設置はありません。レゾナンスはF#の少し下に設定されています。
撥弦の弾性感が箱全体を慎ましく震わせ、跳躍するようにして音が現れるロマニリョス特有の発音。爪弾きの感触がそのまま音になったような古風な生々しさがあり、同時にしっかりと重心も感じさせ、その跳躍と重力の案配による心地よい粘りが音にしっかりとしたベクトルを与えています。弦の震えが十全に音化するため、実はロマニリョスのギターは左手のヴィブラートなどの音楽的身振りに対する反応は非常なものがあり、まさしく声のように情感の揺らぎを深さを表出するその表現力が素晴らしい。全体の音響設計的にはクリアな高音を支える重厚な低音というスペイン的バランスですが、各弦の響きには古楽アンサンブル的な彫塑性があり、ポリフォニックな鮮明さにおいても(ヘルマン・ハウザーとはまた異なる意味で)優れたものとなっています。
製作から30年以上を経た楽器として非常な美品と言えるほどに状態は良く、表面板のサウンドホール付近などにわずかに軽微なキズがあるのみで、ネック、フレット、糸巻などの演奏性に関わる部分も良好です。ネック形状は通常の厚みのDシェイプ、ネックとヘッドの接合部分はVジョイント方式になっています。弦高は3.2/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は0.5mmとなっています。糸巻きは出荷時のままのライシェル製が装着されており、こちらも動作状況は良好です。