内部構造はオリジナルに忠実に準拠。サウンドホール上に2本、下側に1本で計3本のハーモニックバーを配置し、それらすべてのバーの高音側と低音側とに4センチほどの開口部が設けられ、バーと垂直に交わるように計4本の力木が開口部をくぐりぬけて高音側と低音側とに各2本設置。そしてボディ下部(くびれより下の部分)は、左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に設置された2本のクロージングバー、ブリッジ位置には駒板と同じ大きさの薄いプレート板が貼られているという全体の構造。表面板と横板の接合部にはオリジナルでは大小のペオネス(三角形型の木製のブロック)を交互に設置していますが、ここでは同じ大きさのペオネスを隙間なく設置するノーマルな仕様。ペオネスを除くこれらの配置的特徴はホセ・ルイス・ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されているものと同じもので、トーレス=ハウザー的スタイルをロマニリョスが再構築したものとしてスタンダード化している設計の一つ。難度の高いこの設計を山根氏は忠実になぞり、また細部に至る工作も非常な精緻さで、丁寧な作業が行き届いています。また全体はセラックによる塗装(前作は横裏板ラッカーで表面板のみセラックニス)でこれも実に綺麗で上質な仕上げ。ボディは軽めの仕上がり(1.52kg)レゾナンスはF#の少し下という低めの設定。
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 3.0mm/6弦 4.0 mm
〔製作家情報〕
1977年栃木生まれ。
幼少の頃より美術・工作・音楽に興味と憧れを抱いていたが、大学在学中に自画像を描いた事がきっかけとなり上達する喜びを得られる物づくりを仕事にしようと考える。また同時に19歳でフォークギターを弾き始め、偶然雑誌でギター製作者の記事を読みその道に入ることを決意。国立音楽院ギタークラフト科に入学し、ウクレレ、エレキギター、スチール弦ギターの製作・修理・調整を学ぶ。卒業後は鷲見英一氏(主にスチール弦ギターの製作)に師事、6年9か月に渡り製作の基本を学んだ後に2009年に地元佐野市で独立して自らの工房を開設する。
2014年頃からはクラシックギター演奏を習い始め、クラシック製作家のアドバイスも受けながら製作も開始。ロマニリョスのモデルをベースにして、スチール弦ギター・ウクレレの製作や修理で培った経験と評価を活かした作品を伝統工法を基本にして製作している。
【楽器情報】
山根淳志氏のクラシックギター50号 ホセ・ルイス・ロマニリョスモデル 2023年新作 No.30 の入荷です。
内部構造はオリジナルに忠実に準拠。サウンドホール上に2本、下側に1本で計3本のハーモニックバーを配置し、それらすべてのバーの高音側と低音側とに4センチほどの開口部が設けられ、バーと垂直に交わるように計4本の力木が開口部をくぐりぬけて高音側と低音側とに各2本設置。そしてボディ下部(くびれより下の部分)は、左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に設置された2本のクロージングバー、ブリッジ位置には駒板と同じ大きさの薄いプレート板が貼られているという全体の構造。表面板と横板の接合部にはオリジナルでは大小のペオネス(三角形型の木製のブロック)を交互に設置していますが、ここでは同じ大きさのペオネスを隙間なく設置するノーマルな仕様。ペオネスを除くこれらの配置的特徴はホセ・ルイス・ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されているものと同じもので、トーレス=ハウザー的スタイルをロマニリョスが再構築したものとしてスタンダード化している設計の一つ。難度の高いこの設計を山根氏は忠実になぞり、また細部に至る工作も非常な精緻さで、丁寧な作業が行き届いています。また全体はセラックによる塗装(前作は横裏板ラッカーで表面板のみセラックニス)でこれも実に綺麗で上質な仕上げ。ボディは軽めの仕上がり(1.52kg)レゾナンスはF#の少し下という低めの設定。
音質的にもオリジナルの要素を十分に体現しており、全体に硬質でクリアな音響。各音の粒立ちははっきりとして芯があり、そして繊細なところはやはりロマニリョス的。程よい粘りをともなった発音も心地よく、全体に高い完成度。しかしながら本家の透徹極まる妥協のない厳しさよりも、山根氏がウクレレやアコースティック等の製作で培ってきたであろうある種素朴で落ち着いた響きのたたずまいがこのモデルの個性となっています。演奏性においてもDシェイプのネックはグリップ感が良く、弦の張りも中庸なので左手は握りやすく感じます。
ヘッドシェイプ、ボディシェイプ等の外形的な部分はオリジナルに準拠していますがその他の意匠はぐっとライトな感触で落ち着いたものになっており、特にオリジナルのラベルデザインは椅子の絵をあしらった落ち着いたセンスを感じさせるもので、どこか全体も威厳というよりは柔和な雰囲気が印象的な一本。注目の若手製作家による優れたオマージュです。