[製作家情報] 岩田裕(Yutaka Iwata)1972年神奈川県生まれ。2000年に楽器製作工場に就職しクラシックギターの製作を開始します。より深く製作技術を学ぶため長野県に工房を構える製作家石井栄(1947~)に師事し、同工房で職人として働きます。2008年にスペインバルセロナに移住。同地の製作家 ラウル・ヤーグェ Raúl Yagüeを訪問した際に サンチャゴ・デ・セシリア Santiago de Cecilia(María Cecilia Saenz Rols と Juan Santiago Canals の共同製作) の工房で働くことを勧められ、一員として加わり現在に至ります。2018年には自身の工房も設立。サンチャゴ・デ・セシリアでの活動と並行して自身のオリジナルモデルを製作しています。彼曰く、自身の作品は「日本で学んだ細心の技術と、スペインで受け継がれている豊かで伝統的な芸術性の融合」であり、さらには工法や演奏性における現代的なニーズにも柔軟に対応することで生まれた、完成度の高い楽器となっています。師譲りの傾向からか、いたずらに華美な要素を盛らず、慎ましく、そして静かな迫力を持った楽器が彼の特徴となっており、本国スペインをはじめ高い評価を得ています。
2020年にフラン・ロペス・モントロとラウル・エンリケ・ナバーロの共同監督によるアントニオ・デ・トーレスのドキュメンタリー「LA ESPAÑOLA, LA DE TORRES」に出演(監督は二人ともトーレスの曾孫にあたるとのこと)。2021年にはグラナダで開催されたアントニオ・マリン・モンテロ 国際ギター製作コンクールに入賞しています。
指 板:黒檀
塗 装:セラック
糸 巻:ルブナー
弦 高:1弦 3.2mm /6弦 3.5mm
[製作家情報]
岩田裕(Yutaka Iwata)1972年神奈川県生まれ。2000年に楽器製作工場に就職しクラシックギターの製作を開始します。より深く製作技術を学ぶため長野県に工房を構える製作家石井栄(1947~)に師事し、同工房で職人として働きます。2008年にスペインバルセロナに移住。同地の製作家 ラウル・ヤーグェ Raúl Yagüeを訪問した際に サンチャゴ・デ・セシリア Santiago de Cecilia(María Cecilia Saenz Rols と Juan Santiago Canals の共同製作) の工房で働くことを勧められ、一員として加わり現在に至ります。2018年には自身の工房も設立。サンチャゴ・デ・セシリアでの活動と並行して自身のオリジナルモデルを製作しています。彼曰く、自身の作品は「日本で学んだ細心の技術と、スペインで受け継がれている豊かで伝統的な芸術性の融合」であり、さらには工法や演奏性における現代的なニーズにも柔軟に対応することで生まれた、完成度の高い楽器となっています。師譲りの傾向からか、いたずらに華美な要素を盛らず、慎ましく、そして静かな迫力を持った楽器が彼の特徴となっており、本国スペインをはじめ高い評価を得ています。
2020年にフラン・ロペス・モントロとラウル・エンリケ・ナバーロの共同監督によるアントニオ・デ・トーレスのドキュメンタリー「LA ESPAÑOLA, LA DE TORRES」に出演(監督は二人ともトーレスの曾孫にあたるとのこと)。2021年にはグラナダで開催されたアントニオ・マリン・モンテロ 国際ギター製作コンクールに入賞しています。
[楽器情報]
岩田裕 製作のダブルトップモデル、2024年新作 No.32の入荷です。Nomex という蜂の巣状の化学繊維シート(Dupont 社が開発した、耐熱性、耐炎性に優れており、あらゆる電気絶縁要件を満たすとされる素材で、航空宇宙業界や交通インフラなどに世界中で採用されている)を2枚のカナダ杉材でサンドイッチ型に貼り合わせることで形成される表面板(ダブルトップ)に、外側がインディアン・ローズウッドそして内側がマッカーサーエボニー(縞黒檀)という異なる木材をラミネートした横裏板を組み合わせたボディ。指板は12フレット以降で表面板よりやや盛り上がったような(実際には表面板を傾斜させることで指板を浮かせている)レイズドフィンガーボード。
モダンな仕様とは対照的に、表面板内部構造はサウンドホール上下に一本ずつのハーモニックバー、同じくサウンドホール両脇(高音側と低音側)には各1本の力木がちょうど横板のカーブに沿って上記の2本のバーの間を繋ぐように設置、ボディのウェストより下は左右対称5本の扇状力木という、いかにも伝統的なスタイルのシンプルな構造を採用しています。さらにボディの型は名工サントス・エルナンデスのものを採用。岩田氏によれば、伝統的な設計による音響特性とダブルトップの高い機能性とを融合させることが主眼だったとのこと。さらに今回横裏板の内側に使用されたマッカーサーエボニーはわずか0.5mmという薄さに加工されており、その硬度と密度により音は明瞭に、力強くそしてバランスフルな音響へと結実させています。これは現在ダブルトップをはじめラティス構造などモダンスタイルのギターでは横裏板をラミネート加工し、強固な安定性を確保することで表面板の振動効率をあげるという設計が主流となっていますが、原理的な問題からどうしても板は厚く、またボディ自体非常に重たくなるというデメリットを解消するという意図があったとのことです(本器の重量は1.78㎏)。
実際にここで聴かれるのは杉材とダブルトップの組み合わせから想像されるような生々しい迫力の音というよりは、むしろきりっとした佇まい。ダブルトップにありがちな音が拡散してゆくような感触ではなく、ボディのしかるべき振動によって生まれる自然な発音で、適度に引き締まりそして十分に艶やかな音となっています。表現の面ではしっかりとタッチの変化に寄り添う音色の変化、そして機能的な面では発音と終止における反応の素早さ、豊かな音量とそのダイナミズムなどが十全に備わっており、製作家自らの言葉を体現したような1本となっています。レゾナンスはGの少し上に設定されています。
全体は美しいセラック塗装仕上げ。ネック形状は普通の厚みのDシェイプ。弦高値は3.2/3.5mm(1弦/6弦 12フレット)で、サドルは2.0mmの調整余地があります。糸巻はRubner 製。繊細かつ精緻なロゼッタデザインはスペインの伝統的なタイル Azulejos をモチーフにしたもの。