ネック:セドロ指 板:エボニー塗 装:ポリウレタン糸 巻:フステーロ弦 高:1弦 3.1mm/6弦 3.8mm[製作家情報]ペドロ・コントレラス・バルブエナ Pedro Contreras Valbuena(1937~2007)スペイン、アリカンテに生まれる。1951年にマドリッドのホセ・ラミレス2世の工房に徒弟として入り製作を学びますが、1956年に兄弟のAlfonso Contreras Valbuenaとともにブラジルに渡り、同地で工房を開きます(ただしこの時期はDi Giorgio や Gianini といった量産ブランドで製作することのほうが主だったようです)。ラミレス2世が1957年に亡くなりラミレス3世が工房を引き継いだ後の1962年にはマドリッドに戻って再びラミレス工房で働くようになり、ここで彼は徒弟ではなく熟練職人(いわゆるマスタークラフツマン)の一人として同ブランドのフラッグシップモデルである1A を製作、そのギターには「PC」のイニシャル刻印を許されています。ラミレスから独立後1986年には同じマドリッドに工房を開き、自身のラベルでの製作を開始します。これに先立つ3年前には息子のPedro Contreras Perez が父のもとで修行を始めており、工房は実質親子でスタートしたことになります。また彼はアルカンヘル・フェルナンデスとも交流があり、アルカンヘルの求めに応じ工房モデルを製作したこともあります(有名なPara Casa Arcangel のラベルとは異なるラベルデザインを使用)。一部の文献ではあの名工マルセロ・バルベロ1世とも生前関わりがあった(工房を手伝った)との記述が見られますが詳細は不明。しかしながらバルベロ1世が亡くなった1956年にバルブエナはラミレスの工房を辞し、ブラジルに向かうという選んでいるということに、何か彼のターニングポイント的な意味を感じさせる興味深い一致を見出すことも可能でしょう。バルブエナはもともとトーレスやサントス・エルナンデスに深い影響を受けており、また彼自身の資質からか、ラミレスの1Aでも彼自身のオリジナルにおいても色を抑えた落ち着いた音の佇まいがあり、同時にマドリッドらしい力強さが自然に同居した魅力的な楽器で、日本でも生前とても人気のあったブランドです。[楽器情報]ペドロ・コントレラス・バルブエナ1世の1992年製クラシックモデル Usedです。ラベルには‘Pedro Valbuena construida para Arcangel Fernandez’ とあり、バルブエナ自身の名前の方が大きく印刷されていますがいわゆるアルカンヘル工房品として製作された1本。表面板力木配置はサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、このうち下側バーの中央から高音側横板のふくらみ部に向かって斜めに下がってゆくように設置されたもう一本のバー(トレブルバー)、扇状力木はほぼ平行に近い角度で5本がちょうど駒板の幅の範囲に収まるように中央に寄り添って配置されており、これらの先端をボトム部で受けとめるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置には薄い補強プレートが貼られているという設計。レゾナンスはAの少し下に設定されています。やはりアルカンヘルの設計に準拠したものと思われますが、アルカンヘルでは扇状力木が高音側にもう一本が設置され計6本(フラメンコモデルでは5本)なのに対し、ここでは力木の代わりにトレブルバーが設置されていることが大きな違いと言えます。さらには2本のクロージングバーは高音側のほうが短く加工されており、これも他のモデルでは見られない設計。音もアルカンヘル的な硬く粘りを伴った発音ですが、アルカンヘルのような悠揚たる響きというよりもどこか慎ましく、繊細な翳さえも含んだバルブエナらしさが聴かれる音となっています。また同時に彼が働いていたラミレス3世のギターのようにやや高音が前景化するような音響バランスと、発音における弾性感よりも木を叩いたような感触が特徴となっており、どちらかと言えばラミレスPCスタンプの松仕様のギターと言ったほうがニュアンスが伝わるかもしれません。全体に軽微なキズのみで割れ等の大きな修理履歴もなく良好な状態です。表面板のサウンドホール高音側には脱着式のゴルペ板を貼って使用していた跡がほんのわずかに残っており、サウンドホール低音側やボトム近くなどに数か所の打痕を部分補修した跡、ブリッジ下部分に弦交換時についた傷などをタッチアップした跡がありますがいずれも外観を損ねるほどではありません。裏板の上部低音側に横に5cmほどの掻き傷を部分補修した跡がありますが、仕上げが粗くやや目立ちますが継続しての使用には全く問題ありません。ネックは良好な状態、フレットは1~12フレットで摩耗が見られ特に1~8フレットで顕著ですが現状で音と演奏性に影響はないレベルです。ネックシェイプは普通の厚みのDシェイプ。弦高値は3.1/3.8mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は1.5~2.0mmあるのでお好みに応じてさらに低く設定することが可能です。糸巻はスペインの老舗ブランド Fustero製を装着、こちらも動作状況に問題ありません。
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ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ポリウレタン
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.1mm/6弦 3.8mm
[製作家情報]
ペドロ・コントレラス・バルブエナ Pedro Contreras Valbuena(1937~2007)スペイン、アリカンテに生まれる。1951年にマドリッドのホセ・ラミレス2世の工房に徒弟として入り製作を学びますが、1956年に兄弟のAlfonso Contreras Valbuenaとともにブラジルに渡り、同地で工房を開きます(ただしこの時期はDi Giorgio や Gianini といった量産ブランドで製作することのほうが主だったようです)。ラミレス2世が1957年に亡くなりラミレス3世が工房を引き継いだ後の1962年にはマドリッドに戻って再びラミレス工房で働くようになり、ここで彼は徒弟ではなく熟練職人(いわゆるマスタークラフツマン)の一人として同ブランドのフラッグシップモデルである1A を製作、そのギターには「PC」のイニシャル刻印を許されています。ラミレスから独立後1986年には同じマドリッドに工房を開き、自身のラベルでの製作を開始します。これに先立つ3年前には息子のPedro Contreras Perez が父のもとで修行を始めており、工房は実質親子でスタートしたことになります。また彼はアルカンヘル・フェルナンデスとも交流があり、アルカンヘルの求めに応じ工房モデルを製作したこともあります(有名なPara Casa Arcangel のラベルとは異なるラベルデザインを使用)。一部の文献ではあの名工マルセロ・バルベロ1世とも生前関わりがあった(工房を手伝った)との記述が見られますが詳細は不明。しかしながらバルベロ1世が亡くなった1956年にバルブエナはラミレスの工房を辞し、ブラジルに向かうという選んでいるということに、何か彼のターニングポイント的な意味を感じさせる興味深い一致を見出すことも可能でしょう。
バルブエナはもともとトーレスやサントス・エルナンデスに深い影響を受けており、また彼自身の資質からか、ラミレスの1Aでも彼自身のオリジナルにおいても色を抑えた落ち着いた音の佇まいがあり、同時にマドリッドらしい力強さが自然に同居した魅力的な楽器で、日本でも生前とても人気のあったブランドです。
[楽器情報]
ペドロ・コントレラス・バルブエナ1世の1992年製クラシックモデル Usedです。ラベルには‘Pedro Valbuena construida para Arcangel Fernandez’ とあり、バルブエナ自身の名前の方が大きく印刷されていますがいわゆるアルカンヘル工房品として製作された1本。
表面板力木配置はサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、このうち下側バーの中央から高音側横板のふくらみ部に向かって斜めに下がってゆくように設置されたもう一本のバー(トレブルバー)、扇状力木はほぼ平行に近い角度で5本がちょうど駒板の幅の範囲に収まるように中央に寄り添って配置されており、これらの先端をボトム部で受けとめるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置には薄い補強プレートが貼られているという設計。レゾナンスはAの少し下に設定されています。やはりアルカンヘルの設計に準拠したものと思われますが、アルカンヘルでは扇状力木が高音側にもう一本が設置され計6本(フラメンコモデルでは5本)なのに対し、ここでは力木の代わりにトレブルバーが設置されていることが大きな違いと言えます。さらには2本のクロージングバーは高音側のほうが短く加工されており、これも他のモデルでは見られない設計。
音もアルカンヘル的な硬く粘りを伴った発音ですが、アルカンヘルのような悠揚たる響きというよりもどこか慎ましく、繊細な翳さえも含んだバルブエナらしさが聴かれる音となっています。また同時に彼が働いていたラミレス3世のギターのようにやや高音が前景化するような音響バランスと、発音における弾性感よりも木を叩いたような感触が特徴となっており、どちらかと言えばラミレスPCスタンプの松仕様のギターと言ったほうがニュアンスが伝わるかもしれません。
全体に軽微なキズのみで割れ等の大きな修理履歴もなく良好な状態です。表面板のサウンドホール高音側には脱着式のゴルペ板を貼って使用していた跡がほんのわずかに残っており、サウンドホール低音側やボトム近くなどに数か所の打痕を部分補修した跡、ブリッジ下部分に弦交換時についた傷などをタッチアップした跡がありますがいずれも外観を損ねるほどではありません。裏板の上部低音側に横に5cmほどの掻き傷を部分補修した跡がありますが、仕上げが粗くやや目立ちますが継続しての使用には全く問題ありません。ネックは良好な状態、フレットは1~12フレットで摩耗が見られ特に1~8フレットで顕著ですが現状で音と演奏性に影響はないレベルです。ネックシェイプは普通の厚みのDシェイプ。弦高値は3.1/3.8mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は1.5~2.0mmあるのでお好みに応じてさらに低く設定することが可能です。糸巻はスペインの老舗ブランド Fustero製を装着、こちらも動作状況に問題ありません。