[製作家情報] ホセ・ヤコピ Jose Yacopi(1916~2006)。スペインのビトリア生まれ。父親のガマリエル・ヤコピの工房に入り、18歳の時に最初のギターを製作しています。1949年には家族でアルゼンチンのブエノス・アイレスにほど近いサン・フェルナンドに移り住んで工房を開き、そこで生涯ギターを作り続けました。最初は父親と同様にアントニオ・デ・トーレスを規範とした伝統的なスペインギターを製作していましたが、移住する直前の1947年ごろから父親と共に発案した、通常とは逆方向に放射状に配置された扇状力木構造を採用するようになり、これがこのブランドの特徴となります。本国アルゼンチンではその需要の増大に対応するために工房品含め年間約300本のギターを出荷していた時期もありますが、最上位モデルはその1割ほどで、良質な材を使用して本人が製作しています。
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.0mm /6弦 4.0mm
[製作家情報]
ホセ・ヤコピ Jose Yacopi(1916~2006)。スペインのビトリア生まれ。父親のガマリエル・ヤコピの工房に入り、18歳の時に最初のギターを製作しています。1949年には家族でアルゼンチンのブエノス・アイレスにほど近いサン・フェルナンドに移り住んで工房を開き、そこで生涯ギターを作り続けました。最初は父親と同様にアントニオ・デ・トーレスを規範とした伝統的なスペインギターを製作していましたが、移住する直前の1947年ごろから父親と共に発案した、通常とは逆方向に放射状に配置された扇状力木構造を採用するようになり、これがこのブランドの特徴となります。本国アルゼンチンではその需要の増大に対応するために工房品含め年間約300本のギターを出荷していた時期もありますが、最上位モデルはその1割ほどで、良質な材を使用して本人が製作しています。
非常に独特な音響と音色を備えており、中低音から低音にかけての重厚で柔らく、奥行きのある深い響きと引き締まって艶やかな高音との対比とバランスが素晴らしく、ポリフォニックな曲を演奏した時の立体感は他のギターでは味わえない魅力があります。また音色には南米的な澄んだ色気があり、これが古典と現代の両方の雰囲気を併せ持つことから、クラシック奏者からポピュラー音楽までの幅広いユーザーに愛されてきました。マリア・ルイサ・アニードやエドゥアルド・ファルーらが愛用し、また近年ではボサノヴァや南米音楽の愛好家にも絶大な支持を受けています。
現在は息子のフェルナンド・ヤコピが工房を継いでいますが、ファンの間ではやはり1960年代から亡くなる前の1990年代までのJose本人による楽器に人気が集中しています。
[楽器情報]
ホセ・ヤコピ 1978年製 No.1219 Usedです。横裏板に中南米ローズ材を使用したハイスペックなモデルで(ヤコピはこの他にインディアン・ローズウッド、アイアンウッド仕様のモデルや、より一般向けのワークショップモデルなども製作していました)、このブランドの音色と外観における魅力が円満に備わった1本となっています。湿度を含んだような独特のリヴァーブ感、爪弾きの感触が生々しい彫りの深い和音、艶というよりはさらっとした粒子的な肌理を持った音像、どこか翳のある響き等々は「南米的」というカテゴライズでは括りきることのできないこのブランドの独自性があり、クラシックそして南米音楽の双方のユーザーからの支持をいまなお集めています。艶やかな飴色のセラック塗装で仕上げられた全体の外観も相変わらずエキゾチックな味わいを醸し出しています。
表面板力木構造もヤコピ独自のもので、扇状力木(通常は3~11本ほどの力木をサウンドホールからボトム方向に向かって扇状に拡がってゆくようにして配置される)を、その支点をエンドブロック側に設定し、通常とは逆にボトム側からネック方向に向かって扇が広がってゆくように配置しています。センターの板の接ぎ部分は12枚の小さな補強板を貼り付けており、高音側低音側それぞれ3本ずつ左右対称に力木を設置。サウンドホールの下側に1本、上側には長短1本ずつのハーモニックバーを設置しているという全体の配置構造。レゾナンスはG~G#の間に設定されています。
裏板低音側上部に木目に沿って15cmほどの割れ補修歴がありますが丁寧な処置が施されており、外観を損ねることなくまた継続しての使用にも問題ありません。その他横裏板は衣服等による摩擦や細かな搔き傷等あります。表面板は全体に弾き傷や大小の打痕・搔き傷などがあり、駒板下は1弦と2弦部分に弦とび傷があるほか弦交換時の傷が多くついているなど年代相応の使用感があります。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分は良好で、ネックは薄めのCシェイプでコンパクトなグリップ感、弦高値は3.0/4.0mmですが弦の張りは中庸で数値の割に押さえ易く感じます。サドル余剰は現状でありません。糸巻はカナダの高級ブランドRodgers製に交換されており、現状で動作状況は良好です。全体の重量は1.69㎏。