[製作家情報] Karel Dedain カレル・デダイン 1976年生まれ。ベルギー、ヘント(Gent)に工房を構える製作家で同国のワルタル・ヴェレートと並んで国際的に評価の高まりを見せる俊秀です。 もともとはグラフィックアートを学んでいましたが20歳のころにフラメンコギターを演奏するようになり、木工が得意だった彼は自分のためにギターを作ろうと思い立ち、同国の製作学校 CMB(Centrum voor Muziekinstrumentenbouw)でワルタル・ヴェレートに師事します。カレル氏曰く「ベルギーにはギター製作の伝統がなく、それが逆に製作を志す者に選択の自由を与えてくれました。つまり自らのヴィジョンを実現するのに国や流派に関係なく、それらを横断しながら自らのスタイルに合うものを研究したのです。そしてまたマテリアルの面でも、様々な国へと製作に必要な木材や治具を探しに行かなければなりませんでした。」このように自らのスタイルを貪欲に追及する中でラティスやダブルトップなどのモダンギターも製作した彼は、やがてその着地点をトーレス、アリアス、ガルシア、シンプリシオ、そしてマヌエル・ラミレス工房などのスペインの名工たちによるギターに定めてゆきます。現在はそれらの精緻なレプリカモデル及び ‛Inspired’(つまり自らの創意を加えて再構築した)モデル、そして自身のオリジナルモデルを製作しています。その繊細極まりない造作とオリジナルのエッセンスを忠実に再現する稀有な完成と技術、極めて高い演奏性、完璧な音響性などは師のヴェレートにも比肩しうるクオリティを有し、高い評価を獲得してゆきます。
指 板:エボニー
塗 装:セラックニス
糸 巻:アレッシー
弦 高:1弦 3.0 mm/6弦 4.0 mm
[製作家情報]
Karel Dedain カレル・デダイン 1976年生まれ。ベルギー、ヘント(Gent)に工房を構える製作家で同国のワルタル・ヴェレートと並んで国際的に評価の高まりを見せる俊秀です。
もともとはグラフィックアートを学んでいましたが20歳のころにフラメンコギターを演奏するようになり、木工が得意だった彼は自分のためにギターを作ろうと思い立ち、同国の製作学校 CMB(Centrum voor Muziekinstrumentenbouw)でワルタル・ヴェレートに師事します。カレル氏曰く「ベルギーにはギター製作の伝統がなく、それが逆に製作を志す者に選択の自由を与えてくれました。つまり自らのヴィジョンを実現するのに国や流派に関係なく、それらを横断しながら自らのスタイルに合うものを研究したのです。そしてまたマテリアルの面でも、様々な国へと製作に必要な木材や治具を探しに行かなければなりませんでした。」このように自らのスタイルを貪欲に追及する中でラティスやダブルトップなどのモダンギターも製作した彼は、やがてその着地点をトーレス、アリアス、ガルシア、シンプリシオ、そしてマヌエル・ラミレス工房などのスペインの名工たちによるギターに定めてゆきます。現在はそれらの精緻なレプリカモデル及び ‛Inspired’(つまり自らの創意を加えて再構築した)モデル、そして自身のオリジナルモデルを製作しています。その繊細極まりない造作とオリジナルのエッセンスを忠実に再現する稀有な完成と技術、極めて高い演奏性、完璧な音響性などは師のヴェレートにも比肩しうるクオリティを有し、高い評価を獲得してゆきます。
近年ではフランスのアート系出版社Camino Verde が刊行するウェブマガジン「Orfeo Magazine」で特集が組まれたほか(同特集では師のヴェレートらベルギーの製作家がフィーチャーされました)、同出版社が発行する製作家シリーズ(サントス・エルナンデス、ルネ・ラコート、そしてビセンテ・アリアス)での実寸図作成を担当し執筆陣にも名を連ねるなどし日本でも注目を集めています。因みに彼が作成した実寸図は実作を視野にした極めて精緻なもので、これらの書籍の資料的価値をより高める重要なコンテンツのひとつとなっています。
[楽器情報]
カレル・デダイン製作のビセンテ・アリアス モデル 2023年の最後に届いた素晴らしい新作です。トーレスとほぼ同時代を生きたスペインの名工ビセンテ・アリアス Vicente Arias(1833~1914)の個性的なモデルの中でも取り分けそのインパクトと芸術性において名品とされるリングロゼッタデザインの一本を規範にしたモデルです。最高級のヨーロッパ松とバーズアイメイプルの組み合わせに強烈なアクセントを添える意匠、その全体の高貴なたたずまいが先ずは素晴らしい。リングは臙脂色とモスグリーンとを交互に組み合わせ、それを漆黒の地の配置、その外側と内側はこれも特徴的な色違いの半月形を合わせたような細かなデザインを等間隔に取り囲むように配置、これをパーフリングにも採用し不思議な統一感を持たせています。
音も極めてユニークで素晴らしい。木がじかに声を発しているような(つまり物質的な音ではなく)ヴィヴィッドな発音で、しかも極度に洗練された雑味のない音像。小さめなボディとは思えない音圧の高さで、しかし(それこそ大音量のモダンギターのような)不自然なところは一切なく、音楽的な抑制が絶妙になされています。メイプル特有の真綿のような触感の音が耳に心地よく、加えてオリジナルが1880年代のギターであることを充分に想起させるロマンティックな表情。音響的にも低音、中低音、高音のそれぞれのアイデンティティがしっかりとしていながら自然な全体のバランスを築き上げており、まさに弦合奏のようなパースペクティブを聴くことが出来ます。現存する本数が極めて少ないアリアスのギターをおそらく今世界で最も多く検分したであろうこの製作家の経験値のみならず、彼自身の稀有な作家性が現れた逸品となっています。
表面板内部構造はサウンドホール上下に一本ずつのハーモニックバー、ネック脚とバーの間に切妻形の補強プレート、サウンドホール両側(高音側と低音側)にも各一枚の平坦な補強プレート、その外側に短い力木が一本ずつ配置されています(この短い力木は例えばトーレスなら近接する横板のカーブに沿って設置されるところ、それとは反対にネック方向に僅かに傾いて設置されています)。そしてボディ下部には6本の扇状力木が設置されているのですが、センター(表面板の中央)がなく、扇頂点がそれぞれ微妙に異なるような独特のアシンメトリな配置になっており長さも高音側は長く低音側は短く設定されています。またボトム部でV字型に配置されることの多いいわゆるクロージングバーも本作では設置されていません。上記のような構造はトーレス以前を含めても類例がなく、アリアスの独創によるものと考えられています。ボディ重量は1.22kgと非常に軽く、レゾナンスはEの下に設定されています。
弦高値は入荷時のまま3.0/4.0㎜(1弦/6弦 12フレット)で設定されています。サドルには2.0㎜程の余剰がありますのでお好みに応じて低く調整することが可能です。本器は640㎜仕様ですので弦の張りは中庸で押さえやすくなっています。
Camino Verde社刊「ビセンテ・アリアス 忘れられた名工」での深い洞察と再現力で確かな力量を見せてくれた氏の、期待にたがわぬ充実した一本。本邦初紹介です。