ギターショップアウラ ギターカタログサイト
ギターショップアウラ ギターカタログサイト
トビアス・ブラウン Tobias Braun
New Arrival
〔商品情報〕
楽器名 | トビアス・ブラウン Tobias Braun |
カテゴリ | 輸入クラシック 中古 |
品番/モデル | サントス・エルナンデス 1924モデル |
弦 長 | 650mm |
国 | オーストリア Austria |
製作年 | 2019年 |
表 板 | 松 Solid Spruce |
裏 板 | シープレス Solid Cypress |
程 度※ | 8 |
定 価 | 時価 |
販売価格(税込) | 1,430,000 円 |
付属品 | ハードケース |
下の写真をクリックすると拡大して表示します
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ルブナー
弦 高:1弦 2.8mm /6弦 4.0mm
[製作家情報]
トビアス・ブラウン Tobias Braun 1960年 ドイツ、ホルツミンデン生まれ。のちオーストリア、ウィーン郊外の町ペルヒトルツドルフに移り、青年時代を過ごす。学業を終えた後はドイツ文学とジャーナリズムの勉強をしながら同時に独学でギター製作を習得し、1983年に最初の1本を製作。翌年には彼の製作家としての道筋を決定づけることになる名工ホセ・ルイス・ロマニリョス(1932~2022)のギター製作コースに参加。その後1988年にベルギーで開催された2回目を、その翌年1989年にもスペインのコルドバで3回目のコースを受講。同年にはウィーンでのマイスター資格を取得しており、製作家としての地歩を着実に固めてゆきます。1990年にロマニリョスの名著 ‘Antonio de Torres. Guitar Maker ー His Life and Work’ のドイツ語版を製作家のゲルハルト・オルディゲスと共同翻訳して出版。1992年にも4回目を受講し、そして翌年にはついにアシスタントとしてロマニリョスを支えてゆく立場にまでなってゆきます。1998年に工房をウィーンの森近くのガーデンに移し、現在もここで製作を続けています。彼は教育活動にも精力的で、楽器製作者のための継続的な教育と専門的な能力開発を主眼として設立された協会 N.I.C.E(“The Neufeld Instrument Makers’ Congress and Event”) 創設メンバーとして名を連ねているほか、アメリカの大手ギターメーカーGibsonや日本などでのレクチャー、また自身が開催する製作ワークショップなど、師ロマニリョスがまさにそうであったように、後進の育成に力を注いでいます。
ロマニリョスの存在が彼の製作美学形成にとって最高度に重要であったことは疑いを入れませんが、と同時に、その理想的なモデルとなったのはやはりトーレス、マヌエル・ラミレス、サントス・エルナンデスからヘルマン・ハウザー1世といった名工たちであり、彼らの名品を実地に研究し独自の音響哲学と現代的な感性で造り上げたレプリカモデルはどれも瞠目すべき美しさと優れた音質を有したものとして、現在はヨーロッパだけでなく世界的な評価とシェアを確立しています。近年ではOrfeo Magazine を発行するフランス パリの出版社Camono Verdeによる製作家シリーズで「Vicente Arias」「Santos Hernandez」などで共同執筆者に名を連ねています。
[楽器情報]
トビアス・ブラウン製作 2019年製 サントス・エルナンデス1924モデル Used良品が入荷致しました。同国オーストリアの女流ギタリストで20世紀屈指の名手と謳われたルイーゼ・ワルカーとの交流があったブラウンは、彼女が所有していた1924年製のサントス・エルナンデスを修理する機会に恵まれ、この名品(彼女の師ミゲル・リョベートがサントスの工房で自らセレクトして直接ウィーンの彼女の自宅に運んできたという)をじっくりと研究しています。本作のラベルにはSH1924とあり、彼がワルカー所有のサントスに準拠して作り上げた、しかし見事に個性的なサントスへのオマージュモデルとなっています。
その個性は表面板内部構造にも表れています。サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバーとほぼサウンドホールの直径と同じ幅の厚さ3㎜ほどの補強板、補強板はまたホールを角形に囲うように貼り付けられており、ホール下側にも1本のハーモニックバーを設置。扇状力木は左右対称7本(とても薄く造られています)、ボトム部には2本の短いクロージングバーが7本すべてではなく両外側の各2本の先端のみを受け止めるようにして配置されています。そしてさらにささやかながら特徴的なのはこのクロージングバーよりも少し駒板寄りのところにクロージングバー同様に短いバーがちょうど駒板下辺の延長線上をなぞるようにして高音側と低音側に各一本設置されており、扇状力木7本のいちばん外側から2番目の力木はこのバーを貫通してクロージングバーに到達するような構造になっています。この高音側(と低音側)に限定的な範囲でバーを設置し特定の力木がこれを通過(あるいは貫通)する設計はサントスのオリジナルには見られないもので、むしろデビッド・ルビオやダニエル・フレドリッシュ的なものを想起させもする。クロージングバーの配置に関するサントスのいくつものヴァリエーションは興味深く、ブラウンもここで自身の物理的発想を具現したとも言えます。レゾナンスはFの少し上に設定されています。
シープレス材を使用した楽器ながら非常な密度をもった響きで、低い重心感覚のたっぷりとした低音に力強くクリアな高音との対照とバランスという鉄壁のスペイン的音響設計。シープレス材の特性は軽さではなく音像のさらっとした柔らかな肌理に表れており、またボディ全体の震えるような生々しさやふくよかな響きの奥行きという点にもよく表れています。撥弦の弾性感がそのまま洗練された点へと純化するような発音で、極めて自然ですが非常に高い音圧と併せて実に心地よい鳴り。音色はほんのわずかなタッチの変化にも反応し、しかも常に楽音としてのニュアンスを十分に含んでいます。サントス的な音響としてよく言われる、各弦(各音)が異なったアイデンティティを有しながらも有機的な全体を構築するような響きは、あえて言えば弦楽四重奏的で、彫りの深い音楽を生み出すのに寄与しています。先述のシープレス的音質特性はブラウンの本作において、古典音楽での古雅、現代音楽での透徹さにまで対応できるキャパシティとなっており、ここに彼の職人としての極めて高い技術と現代的感性が現れていると言えます。
この製作家らしい、ベアクロウのたっぷり入った表面板の松材とシープレス(裏板は3ピース仕様)の組み合わせによる審美的な外観がまずは素晴らしい。ヘッドはオリジナルに準拠してマヌエル・ラミレスタイプのデザイン、ロゼッタも有名なリボン柄デザインを採用、全体は極めて繊細なセラック塗装仕上げで気品があります。
全体にほんのわずかに軽微なキズがあるのみのとても良好な状態です。表面板のサウンドホール高音側には簡易ガードを脱着した跡が塗装上にわずかにありますが、目を近づけてそれと認識できる程度のものでほとんど目立ちません。割れなどの大きな修理履歴はありません。ネック、フレット、糸巻などの演奏性に関わる部分もすべて良好です。ネックは普通の厚みのDシェイプでフラットな形状、弦高値は2.8/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)。サドルはロングサドルの可動式になっており、左記の弦高値はいちばん低く設定した場合の値になっています。この設定でサドル余剰が1.5~2.5mmあります。重量は1.47㎏。
ラベル上部に記載されている「43% RH」は相対湿度(Relative Humidity)の意味で、43%の環境で保管または製作されたことを表しているものと思われます。