ネック:セドロ指 板:エボニー塗 装:表板:セラック /横裏板 :セラック糸 巻:スローン弦 高:1弦 2.9mm/6弦 3.8mm〔製作家情報〕 1980年東京都府中市生まれ。16歳の時に茶位幸信のギター製作教室に参加し、その後氏が校長を務めるフェルナンデスギター・エンジニアスクールに入学。 在学中に河野ギター製作所の桜井正毅に手紙を書き、これがきっかけとなり2000年に同製作所に入社、製作技法を学ぶと共にギターと音楽についての見識を深めていきました。 2013年の退社後すぐにその探究心の赴くままスペイン各地を廻り、ホセ・ルイス・ロマニリョス、マヌエル・カセレス、アントニオ・マリン・モンテロ、イグナシオ・フレタら名工たちの工房を訪れます。そして帰国後は禰寝孝次郎、尾野薫からのアドバイスや指導を受けながら、満を持して自身のラベルによる製作を開始。様々なジャンルの音楽と文化に対する知的好奇心、そして常に広く柔軟な視野を持ちながら、スペインギターの真髄に迫ろうとするその真摯な姿勢は一貫しており、彼の楽器はもはや端倪すべからざる高みに達していると言えます。現在は年間5本前後のペースで製作。 そのクラシカルで透徹した響きとじっくりと綿密に造り込まれた美しい仕上がりとで、こだわりを持つユーザーから高い評価を得ています。彼が河野ギター製作所時代に製作した作品をレゲエミュージック界の巨匠アール・チナ・スミスが長年愛用していることが国内のギターマガジン誌上で大きく取り上げられ、新たなファン層を拡大していることは記憶に新しい。2020年にはフランスCamino Verde社出版のOrfeo Magazine No.15 にインタビュー記事が掲載され、国内外での評価もさらに高まりを見せている若手の一人です。オルフェオマガジン「日本の製作家」特集掲載号 オンラインショップ商品ページはこちらオルフェオ取材同行記 栗山大輔、清水優一、禰寝碧海編はこちら〔楽器情報〕 清水優一製作 70号 ロマニリョスモデル 2023年新作です。ハウザー1世モデルと並びこのブランドの定番となっている人気モデル。清水氏の近作はオリジナルのロマニリョスに造作と音響の面で肉迫すると言っても良いほどのクオリティを有し、ユーザーの高い評価を得てきました。ホセ・ルイス・ロマニリョスといえばあの印象的なロゼッタ(コルドバにある有名なモスクの礼拝堂の柱廊とアーチを模したもの)をはじめとするフォトジェニックなデザインもまた有名なブランドですが、今作において清水氏は自身初のオリジナルデザインにて製作。また内部構造も前作までは複雑な力木配置(ホセ・ルイス・ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されているもの)を採用していましたが、本作はトーレススタイルのシステムで製作し、音響の面でもこれまでとは異なるコンセプトで作り上げています。表面板力木はサウンドホール上側に2本、下側に1本のハーモニックバー、サウンドホール高音側と低音側とで1本ずつの短い力木がちょうど近接する横板のカーブに沿うように設置され、扇状力木は左右対称に計7本、ボトム部でそれらの先端を受け止める2本のクロージングバーという全体の配置。これはロマニリョス著の前掲書のなかではPlan2 として掲載されているものになり、基本的にトーレスプランに則った設計になります。重量は1.48㎏と軽め。レゾナンスはE~Fの間という低い位置に設定されています。清水氏の緻密で審美センスに溢れた仕上げはやはり素晴らしく、本作でのオリジナルデザインによる意匠もまた繊細で渋く落ち着いた味わい。ロゼッタはパイプと煙をイメージしたもので(これは清水氏自身の嗜好を反映したもの)、このモデルに相応しい濃いブラウンを基調に、抽象化された洒落た文様が楽器のイメージにうまくフィットしています。駒板の弦巻き付け部には鮮やかなターコイズ素材でスクエアドットの象嵌が慎ましく施され、これがさりげないアクセント。ヘッドシェイプはロマニリョスデザインに準拠しています。Plan1の設計による前作までの同モデルでは、ハウザー/トーレスを通過したロマニリョスによるひとつの極点ともいうべき音響を自身の音質嗜好のなかに見事に着地させていましたが、トーレススタイルの本作では透徹性はそのままに、清水氏らしい滋味深い音色を聴かせてくれます。基本ストイックな音響の中に、奏者の心にふと応えるかのようにロマンティックな表情を湧出してくる瞬間が素晴らしい。ほんの少し粘りを感じさせる発音は撥弦の瞬間に素早く跳躍してゆくような魅力的な身振りを備えたものですが(田邊雅啓氏はこれを「コケティッシュな発音」と表現してします)、この最もロマニリョス的な音響特性をしっかりと掴んだうえで、清水氏は全体を、まさしくその外観からイメージさせるままの渋い雰囲気に仕立て上げています。ハウザーモデルで聴かせる凛とした力強さとは別の、クラシカルな陰影に富んだ魅力的な一本です。ネックは殆どCラウンドに近いほどに角の取れたDシェイプで薄めに加工されており、とてもコンパクトな感触。弦高は出荷時の設定で1弦2.9mm/6弦3.8mmで弦の張りも中庸なので弾き易い印象です。
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ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板:セラック /横裏板 :セラック
糸 巻:スローン
弦 高:1弦 2.9mm/6弦 3.8mm
〔製作家情報〕
1980年東京都府中市生まれ。16歳の時に茶位幸信のギター製作教室に参加し、その後氏が校長を務めるフェルナンデスギター・エンジニアスクールに入学。 在学中に河野ギター製作所の桜井正毅に手紙を書き、これがきっかけとなり2000年に同製作所に入社、製作技法を学ぶと共にギターと音楽についての見識を深めていきました。 2013年の退社後すぐにその探究心の赴くままスペイン各地を廻り、ホセ・ルイス・ロマニリョス、マヌエル・カセレス、アントニオ・マリン・モンテロ、イグナシオ・フレタら名工たちの工房を訪れます。そして帰国後は禰寝孝次郎、尾野薫からのアドバイスや指導を受けながら、満を持して自身のラベルによる製作を開始。様々なジャンルの音楽と文化に対する知的好奇心、そして常に広く柔軟な視野を持ちながら、スペインギターの真髄に迫ろうとするその真摯な姿勢は一貫しており、彼の楽器はもはや端倪すべからざる高みに達していると言えます。現在は年間5本前後のペースで製作。 そのクラシカルで透徹した響きとじっくりと綿密に造り込まれた美しい仕上がりとで、こだわりを持つユーザーから高い評価を得ています。彼が河野ギター製作所時代に製作した作品をレゲエミュージック界の巨匠アール・チナ・スミスが長年愛用していることが国内のギターマガジン誌上で大きく取り上げられ、新たなファン層を拡大していることは記憶に新しい。2020年にはフランスCamino Verde社出版のOrfeo Magazine No.15 にインタビュー記事が掲載され、国内外での評価もさらに高まりを見せている若手の一人です。
オルフェオマガジン「日本の製作家」特集掲載号 オンラインショップ商品ページはこちら
オルフェオ取材同行記 栗山大輔、清水優一、禰寝碧海編はこちら
〔楽器情報〕
清水優一製作 70号 ロマニリョスモデル 2023年新作です。ハウザー1世モデルと並びこのブランドの定番となっている人気モデル。清水氏の近作はオリジナルのロマニリョスに造作と音響の面で肉迫すると言っても良いほどのクオリティを有し、ユーザーの高い評価を得てきました。ホセ・ルイス・ロマニリョスといえばあの印象的なロゼッタ(コルドバにある有名なモスクの礼拝堂の柱廊とアーチを模したもの)をはじめとするフォトジェニックなデザインもまた有名なブランドですが、今作において清水氏は自身初のオリジナルデザインにて製作。また内部構造も前作までは複雑な力木配置(ホセ・ルイス・ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されているもの)を採用していましたが、本作はトーレススタイルのシステムで製作し、音響の面でもこれまでとは異なるコンセプトで作り上げています。
表面板力木はサウンドホール上側に2本、下側に1本のハーモニックバー、サウンドホール高音側と低音側とで1本ずつの短い力木がちょうど近接する横板のカーブに沿うように設置され、扇状力木は左右対称に計7本、ボトム部でそれらの先端を受け止める2本のクロージングバーという全体の配置。これはロマニリョス著の前掲書のなかではPlan2 として掲載されているものになり、基本的にトーレスプランに則った設計になります。重量は1.48㎏と軽め。レゾナンスはE~Fの間という低い位置に設定されています。
清水氏の緻密で審美センスに溢れた仕上げはやはり素晴らしく、本作でのオリジナルデザインによる意匠もまた繊細で渋く落ち着いた味わい。ロゼッタはパイプと煙をイメージしたもので(これは清水氏自身の嗜好を反映したもの)、このモデルに相応しい濃いブラウンを基調に、抽象化された洒落た文様が楽器のイメージにうまくフィットしています。駒板の弦巻き付け部には鮮やかなターコイズ素材でスクエアドットの象嵌が慎ましく施され、これがさりげないアクセント。ヘッドシェイプはロマニリョスデザインに準拠しています。
Plan1の設計による前作までの同モデルでは、ハウザー/トーレスを通過したロマニリョスによるひとつの極点ともいうべき音響を自身の音質嗜好のなかに見事に着地させていましたが、トーレススタイルの本作では透徹性はそのままに、清水氏らしい滋味深い音色を聴かせてくれます。基本ストイックな音響の中に、奏者の心にふと応えるかのようにロマンティックな表情を湧出してくる瞬間が素晴らしい。ほんの少し粘りを感じさせる発音は撥弦の瞬間に素早く跳躍してゆくような魅力的な身振りを備えたものですが(田邊雅啓氏はこれを「コケティッシュな発音」と表現してします)、この最もロマニリョス的な音響特性をしっかりと掴んだうえで、清水氏は全体を、まさしくその外観からイメージさせるままの渋い雰囲気に仕立て上げています。ハウザーモデルで聴かせる凛とした力強さとは別の、クラシカルな陰影に富んだ魅力的な一本です。
ネックは殆どCラウンドに近いほどに角の取れたDシェイプで薄めに加工されており、とてもコンパクトな感触。弦高は出荷時の設定で1弦2.9mm/6弦3.8mmで弦の張りも中庸なので弾き易い印象です。