ネック：マホガニー
指　板：エボニー
塗　装：表板/セラック 横裏板/ラッカー
糸　巻：スローン
弦　高：1弦 2.8mm ／6弦 3.7 mm

〔製作家情報〕
1960年岐阜県生まれ。岐阜県内の工業高校を卒業後に三菱化学に入社。三重県四日市工場及び茨城県鹿島工場にて10年間勤務した後、物作りを目指し退社。5年間色々な職人・職業を転々とした後、ギター製作を志し長野県の茶位幸秀手工品ギター工房に34歳にて弟子入り。約3年間の修業を経て独立、地元岐阜にて工房を開く。日本弦楽器製作者協会会員。（製作家ホームページより）

細部の造作まで神経の行き届いた堅実な造りのギターで、ダブルトップ仕様やレイズドフィンガーボードなどの現代的な要素も柔軟に取り入れ、弾き易さや音量、音響バランス等の点でも常に高いアベレージを維持したそのモデルラインナップは確実にユーザー層を拡げています。

〔楽器情報〕
寺町誠 製作 MT-2 Spread 2009年製Usedです。MT-1～3のグレードでモデルラインナップを展開する（それぞれトラディショナルなスタイルとダブルトップの2種類がある）このブランドではミドルクラスに位置づけられるもの。氏の特徴は技師と呼べるほどに精確な造作技術と音響に対する工学的なアプローチ、そして抑制された（ある意味紳士的とも言える）音色表現と言えますが、氏のお人柄か、あるいは技師的な美学によるものか楽器としてはややテクニカルあるいはメカニカルな面が際立ってしまうところがありますが、本作「Spread」のトラディショナルなヴァージョンにおいては前述のような特性が実によい案配でまとめられており、魅力的な一本として結実しています。響きは自然であくまでも落ち着いた優しさと色があり、加えてタッチに対する機能的な反応性、全体の音響バランスなども優れています。また本作は640㎜のショートスケールタイプですので手の小さめな方、女性の方にも弾きやすい仕様となっています。

表面板力木構造はサウンドホール上下（ネック側とブリッジ側）に1本ずつのハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木とこれらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、いちばん両外側（高音側と低音側）に配置された扇状力木と交差する短いバー、さらにこの同じ2本の力木のネック側先端を受け止めるように短いバーが斜めに配置されており、ボトム部のクロージングバーを縮小して対称させたような配置になっています。駒板位置には横幅いっぱいに1枚の補強板が貼られています。

表面板の特にサウンドホール周りなどに2～5cmほどの浅いスクラッチ傷、また駒板下部分には弦交換等によるキズがあります。横裏板は衣服等による軽微な摩擦あとのみの比較的きれいな状態。割れ等の大きな修理履歴はありません。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分も状態良好です。ネック形状は薄めのDシェイプでグリップ感がよく、弦の張りも中庸で押さえ易く感じます。弦高値は2.8/3.7mm（1弦/6弦 12フレット）でサドル余剰は1.0㎜。糸巻きはスローン製を装着しておりこちらも現状で機能良好です。